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    Critical-state model for the determination of critical currents in disk-shaped superconductors

     David J. Frankel

     J. Appl. Phys. 50(8) 5402,1979

     ニオブチタンのペレットの臨界状態における表面磁場の測定とその値を使って計算により逆に臨界電流の値を求めた。サンプルはディスク型のもの。これに流れる電流をN個の同心円状のものに分割して近似する。厚さはdz=0.1mm。半径は22.86mmこれをN(たとえば180)に分割すると同心円状の電流の幅はdr=0.13mmになる。このi番目の同心回路に流れる電流をIとする。
    I(ri)=J(ri)*dr*dz
    riはi番目のループの半径である。この電流が(r,z)の位置につくる磁束密度のz成分は
    Bz=2*10^-5*I(ri)/[(ri+r)^2+z^2]^(1/2)*[K+(ri^2-r^2-z^2)*E/((ri-r)^2+z^2))]
    ここでK,Eは完全楕円積分の第1種と第2種であり、因数(argument)kは
    k=4*r*ri/[(ri+r)^2+z^2]
    これをマスマティカで示すとき、絶対値はいい加減だがだいたいの計算は以下のようになる。
    z=0.001;
    kon[r_]:=4*a*r/{(a+r)^2+z^2}
    hz[a_,r_]:=1/{(a+r)^2+z^2}^(1/2)*{EllipticK[kon[r]]+(a^2-r^2-z^2)/{(a-r)^2+z^2}*EllipticE[kon[r]]}
    a=1;
    r0=1;
    Plot[hz[a,r],{r,-2*r0,2*r0}]
    これを元にして磁場分布の全体のプロフィールを計算し、測定結果と比較する。
    最初はJcが磁場によらないものとするかあるいは簡単な磁場依存性を仮定する。高磁場に置いては均一な電流が流れているとした場合に良い一致が見られる。この場合はJcの見積もりも磁場分布から簡単に得られる。しかし低磁場ではJcもdJc/dBもまたその分布も変化が大きく、Jcが一定とした見積もりは近い値にならない。こんな場合にはJcの磁場依存性を取り入れることで改良される。ここではKimのやり方を取り入れる。
    4.result
    fig.4とfig.5にフル臨界状態の測定結果をあげる。低磁場ではkimモデルの二つのパラメーターに敏感である。高磁場ではそうでもない。磁場を増加させるときと減少させるときでよく一致していた。
    fig.6に示されるような場合、ディスクの中心まで磁場が進入していない場合は電流の分布に違った仮定が必要である。この場合は明らかにサンプル全体にわたって電流が流れてはいない。明らかに磁場が進入している狭い部分にだけ電流が流れていると考えても磁場の分布は再現できない。ディスクの中心付近でも電流がゼロでないとした場合に良い一致が見られる。これからシールディングカレントが以下の厚さの範囲で流れているのではないかと考えられる。それは半径が小さくなるとともに流れている厚さの範囲が以下の式に従って減少する。
    z(r)=I/(dr*Jc[B])
    これは磁場が部分的に進入している場合に当てはまりそうだ。この場合にはJとJcがそれぞれ独立して変化する。しかし実際はフルに進入した場合からJcを決定して、z(r)はI(ri)から求める。
    3番目の状態は外部磁場を時間変化させた場合の実験である。(fig.7)実験結果は内部に磁場をトラップさせてその後外場をかけたものである。こんな場合には実験データは磁場の時間変化がディスクの表面に臨界電流を生じさせ、内部には変化を生じないとした場合によく理論と合う。たとえばfig.7の破線は7.9mmを境に電流の方向が入れ替わっている。このときの電流値は臨界状態が成立していると考えた場合の値になっている。
    5.discussion
    サンプルが単調な磁場の増加減少にさらされていて全体的に臨界状態が成立しているならば場合には、ローカルな磁場Bで決定される電流が流れていて、全体の磁場分布からこの電流値が決定される。パラメータはJc(B)だけである。
    部分的にサンプルの一部が臨界状態になっている場合は電流の分布はもっと複雑である。臨界電流が流れている広さ(extent)はJc(B)に含まれるパラメータと同様に実験データをうまく再現するために変化させなければならない。モデル計算によると電流はz軸方向の磁場が外部磁場の5パーセント以下である所を流れなければならない。この電流は試料の可逆的磁化のせいだとは言えない。なぜなら試料を0.34Teslaの磁場中で冷却してその後磁場を減少させた場合にも同様の現象が生じるからである。そんな場合には可逆的磁化はフラックストラッピングに反対の効果を生じるからである。それゆえ等式1はBr(試料円盤と平行な方向)が数十ミリテスラの範囲で変化している場合に成り立つ。ディスク全体が臨界状態になる前からかなりの大きさの半径方向の磁場がJcが流れているディスクの中央部分に存在する。磁場の変化の方向が逆転された場合には臨界状態はやはりまた複雑な状況になる。しかしディスクを分割してある半径より外側と内側でJcの方向が逆転しているとするとよく実験を再現できる。
    Brを測っていないからここで推論された電流分布が唯一の解ではないと注意すべきではない。(気にしなくても良いと言うことか?)計算結果はフル臨界状態でのBzの値をよく再現している。外部磁場の変化に伴う電流分布の変化は以前にシリンダー状のサンプルで考えられたときと同じように変化すると考えることによって部分的に臨界状態である場合もまた磁場の時間変化方向が逆転した場合も実験データをうまく再現する。
    中略
    この方法は無理して小さなサンプルに大電流を流さなくてもJcを測れるし、その電流に沿った方向に生じる小さな電圧を測る必要もない。