M.Daumling and D. C. Larbalestier
physical review B 40(13)9350,1989
概要
我々は有限要素法を用いて半径>>厚さのディスク型の超伝導体の臨界状態において作る磁場を計算した。中心部での磁場は厚さをdとするときJc*dに比例する。シールディング電流はディスクの半径方向の磁場も創りだすがこの値はディスクの表面でJc*d/2ぐらいである。外部磁場がJc*dよりも小さい範囲ではこの自己磁場の影響が支配的で外部磁場とローカル磁場の方向のずれはディスクの周辺で90度?にもなる。YBCOのようにJc*dが大きければ自己磁場の影響は数テスラまで持続する。自己磁場が支配的な領域での計算から求めた磁気モーメントの磁場依存性は、Jcの磁場依存性の強弱によらず、独立している。計算値はNb3Snを用いた実験と比較した。
磁気モーメントを使ったどのJc測定も臨界状態をもとにして考えられている。----------我々はFrankelによってなされた超伝導膜の作る自己磁場の計算を拡張して比(厚さと幅?)を変えたり半径方向の磁場を含めて取り扱えるようにした。計算は高さはdで半径はr0のシリンダー状でおこなった。印加磁場はz方向。対称性から電流は円周方向に流れる。ディスクはnxmに分割し(nは半径方向、mは厚さに沿って)、10^5のセグメントに分ける。電流Iが流れる半径aのループが円柱座標のrとzの位置に作る磁場は以下の式で表される。(式1と2)ループの中心はr=z=0である。
それぞれのセグメントの座標(coordinates)での磁場の値は他のセグメントの作る磁場の値の総和である。(all the other segments,それ以外のセグメントという意味、積分の発散が関わっている)計算はまずセグメントに流れる電流Jを一定と考えておこなう。この電流から作られた磁場を印加磁場に加える。Jcがディスクの全面にわたって磁場依存性がなければ計算はこの時点で終了する。自己磁場が大きい場合はJcの磁場依存性を考慮した。
ディスクの全面にわたって臨界状態(J=Jc(H) ここでHは半径方向と)が成立するようにJの値を調節した。そのJから再び自己磁場を計算しなおした。後これを繰り返す。ふつうは5回の繰り返しで終了した。Jcの磁場依存性はkimタイプを用いた。
Jc=const*1/(H+H0)
Frankelが用いた形状と電流値を用いればその結果は彼の計算と一致する。しかし注意すべきは彼がJcとH0をフィッティングパラメーターとしたことで独立に測定したわけではないことである。我々はシリンダー状の形状も計算して一般的な解を求めた。
fig.1にhr(ディスク表面)とhz(面の中央)の値を示す。大きさはJc*dで規格化してある(Jcが磁場に依存しない場合)半径も規格化半径を用いている。図には厚さが同じで半径の異なる場合が2種書かれている。hzは半径が2桁違うにも関わらず2枚のディスクでほぼ同じである。hzはzの値にはあまり依存しない。z=0が最大値である。hrはz=|d/2|で最大である。(z=0を境にして符号が反転)
計算の結果として主な2点は、まず中心にシールドされた(あるいは取り込まれた)磁場はJc*r0ではなくJc*dであること、よって臨界状態は厚さに依存していること、二つ目は半径方向の磁場はトラップされる磁場の約半分であること、その最大値はJcの磁場依存性によることである。このhrはslabやcylinder状のサンプルでは存在しない。
z方向の磁場は0.85r0で符号が逆転している。これによって反磁性磁場に15パーセントの修正が加わる。(やや不明な文章だ)この反磁性磁場は印加磁場によらず、Jcによるが、これとは反対にdiamagneticの場合には印加磁場はエッジで(4/Pi)(r0/d)のファクターだけ強調される。もし印加磁場がh*よりも十分に大きいならば反磁性磁場による補正は必要ではない。
問題は磁化の磁場依存性からJcの磁場依存性を導くときに生じる。Fig.2に、計算によって求めた磁場と電流密度を示す。h*(いまは3T)よりも弱い印加磁場の領域において、磁化の磁場依存性はJcよりも緩やかに減少する。それ故にJcの磁場依存性はh*よりも弱い磁場においてだけ磁化測定から求めることができる。
印加磁場が大きければ、JcとBのディスク内での場所による変化は小さく、磁場分布の傾きは直線で近似できて、それから逸脱するのは中心部とエッジである。ローカル磁場の方向もほとんど印加磁場と同じである。こんな場合の磁化の履歴は以下の式で表される。
dM=(2/3)Jc*r0
この表現はサンプルの厚さによらず、電流がディスクの全面で一定の場合そのすべてに当てはまる。長いシリンダー状の場合にも同じ形で良い。
我々はNb3Snの横断面の磁場の傾きを測定した。(横方向に測った。)はかり方はキャンベルの交流テクニックを用いて、h*を直接測った。Jcは抵抗測定とh*の測定の両方から求めた。結果はTable1。
中略
h*はこの場合数十ミリテスラぐらいであるから、Jcが試料断面方向で変化しないと考えて良い。この実験の場合はr0/dが約200の場合のテストケースである。........なるほど、h*はJc*dになった。
誘導法による測定は抵抗測定よりも約40パーセントほど大きくなった。これは電圧のしきい値の違いによるものと考えている。抵抗測定では5uV/cmである。これはJcを15から20パーセント増加させる。誘導法で17Hz、0.02Tesla、半径0.5mmの場合10uV/cmである。これによると本当の違いは20%よりも小さく、良い一致といえるだろう。私の他に同様の食い違いを報告している例がある。
この結果は通常のHigh Tc 酸化物の磁化測定の解釈に重要な暗示を与える。ふつうのゼロ磁場の(臨界)電流密度の測定は、まず一定の磁場まで外部磁場を上げてそれからゼロに戻してそのとき内部に取り込まれた磁化を測る。この場合には生じている磁場はシールディングカレントのみが磁場を作り出している。いまさっきおこなった解析によれば、シールディングカレントのみの場合の磁場の方向は表面に垂直ではなく、特に周辺部で面に平行である。異方性のある超伝導体ではこれは重要な暗示で、つまり試料中で磁場の方向が変化することを示す。よってゼロ磁場におけるJcの異方性を磁化から測っても信用ならない。(以下、意味がやや不明)全体としての電流はいつもab面内を流れる。しかしそれぞれのfluxonの周りを流れるlocal currentは複雑で、電流の方向は磁場の方向と超伝導パラメーターの異方性の両方に依存するからである。等方的超伝導体なら電流の方向はいつも磁場に垂直であるが異方的な場合にはそれが当てはまらない。
Jcの磁場依存性を決める場合にも問題が生じる。YBCO単結晶の4.2Kにおける自己磁場は数テスラになる。それゆえ10テスラぐらいまで自己磁場が支配的な領域である。この領域ではalinged powdered specimens を用いた測定がより正確である。ディスクの形をしていなくて一つ一つが小さいのでそれぞれの自己磁場が小さいからだ。
最後に臨界状態の安定性に関して述べる。slab状のサンプルの断熱的安定性の基準が安定パラメーターを決定する。(何の事だ?)
....中略......
ここでベータが1よりも大きければslabはflux-jumpに対して不安定である。計算はシールディング電流の比熱に対する寄与をもとにしてなされている。ベータが1であるならサンプルの有効比熱(effective specific heat )はゼロである。この基準をディスク状のサンプルにあわせて変更しなければならないが、それはシールディングフィールドが異なるからである。ディスクの場合は下記。実験によるとNb3SnはNb基板が超伝導になるとすぐ、0.5tesla以下の低磁場の場合でもflux jumpが観測された。(Nbが超伝導になって熱伝導が悪くなったから?)ベータはこの場合だいたい9である。FrankelのNbTiはだいたい10である。この場合はCuで安定化させている。
YBCOの場合、以下の参考文献の値を用いれば、ベータは678である。それ故臨界状態の減衰が生じそうなものである。中略、私の知る限りではYBCOで1例だけflux jumpが報告されている。可能性として、Tcの違いが考えられる。123においてflux jumpはrun to completion と考えられてはいない。なぜなら20Kで安定しているから。(意味不明)しかし我々はこの説明を十分だとは考えていない。部分的なjumpなら生じるからである。(partialはcompletionと対抗する言葉?)他の可能性として試料の中がいくつかに(無数に)分離しているのではと考えられる。この場合試料全体を流れる電流は部分的なものとなる。これによって試料は超伝導的に安定化して、かつ磁化は大きな値を保つ。