L. W. Conner , A. P. Malozemoff and I. A. Campbell
Physical review B 44 (1)403,1991
概要
高温超伝導体の磁化はゼロ磁場近傍でピークを示す。このピークのメカニズムを提案するが、それは板状のサンプルの自己磁場(self-field)を含み、その磁場はvortexをin plane に曲げ、また臨界電流のin-plane要素からの寄与をもたらす(意味が不明)。数値計算は先の効果を示しかつその効果の大きさは他の等方的要素の存在に依存する。
超伝導体の磁化測定のループにおいてしばしば外部磁場がゼロの近傍で幅の広い高磁場まで続く不可逆磁化のバックグラウンドにのったピークを観測する。それは参考文献7,8や計算ではあるがこの論文のfig.1に見られる。多くの場合このピークはC軸と外部磁場が両方とも結晶面に垂直な場合に見られる。外部磁場がa-b面に入る場合にも見られる。
このピークは小さな臨界磁場と関連づけて論じられる場合もあるが数値実験ではその効果は小さい。他には磁場に依存した臨界磁場から論じられるが、これはつまり臨界電流に磁場の絶対値に(その方向ではなく)依存した要素を考えるものである。磁場がa-b面に平行な場合はこれにより説明されている。
この論文では3番目のメカニズムを提案する。それは板状のサンプルの作るin-planeな自己磁場を異方的臨界電流と結びつけるものである。このJcはvortexがa-b面にあるとき最大である。言い換えればJcは(すなわち不可逆磁場は)ローカル磁場に依存する。
このメカニズムは等方的Jcの場合の最近の計算から出てきた。残留磁化の場合には磁力線はひどく変形している。サンプルの上部ではほぼ水平方向を向いていて粗ぽっく考えれば非常に扁平な双極子と記述できそうだ(fig.2(a))。磁力線は厚さ方向では真ん中で半径方向では端から0.15Rの所にあるリングの周りを回っている。典型的自己磁場の大きさはJctである(tは膜厚、ただし中心とエッジの対数的発散をのぞく)。外部磁場がある場合にはそれを重ねあわせなければならないが(fig.2(b))外部磁場Haが増加するにつれ"straightens out"になる。
我々はこれまでの計算が等方的な場合だったことを強調しなければならない。しかし高温超伝導体のJcは異方的である。特にYBCO単結晶の場合、電流と磁場がa-b面内であるが直交している場合と電流はa-b面内であるが磁場はc軸方向である場合を比較するとJcは5倍ほど違う値となる。薄膜の場合も同じ傾向がある。Jcはintrinsic pinningと関係している。
a-b面を流れる電流から生じる磁場分布はa-b面とc軸方向の成分を持っている。そこで残留磁場に対してJc(a,b),(a,b)とJc(a,b),c(臨界電流のうちで磁場のc軸成分に依存する部分)を考えることができる。外部磁場が増加して磁場分布がstraightens outになればJc(a,b),cが支配的になる。Jc(a,b),(a,b)がJc(a,b),cよりも大きければ外部磁場が自己磁場と同じぐらいの大きさになったとき不可逆磁化が減少することが予想される。これはピークをHa=0近傍に生じさせる。
このメカニズムのもっともらしさを確認するために我々は異方性のある臨界電流を用いた数値計算を行った。臨界電流の角度依存性をあらわすのに式1の級数を用いた。
式1
ここでシータはディスク面からの角度である(外部磁場のみならばシータは90度である)。C0 とC1のみの単純な場合を考えるとJcはローカル磁場がa-b面内に入っているとき最大であり、z軸に沿っているとき最小である。C0は等方的成分できわめて重要である。
計算は最初、ディスク全体で同心円上に均一の電流が流れている状態から始める。それから式1を用いて計算し直して収束するまで繰り返す。詳しくは参考文献17。この計算ではvortexの湾曲による力を無視する。大きなサンプルではこの寄与は小さいからだ。
HrとHzの計算例をfig.3aにあげる。ここではC2=1で後はゼロである。またR/t=5である。この結果は均一な電流の場合とは異なる。Hrがエッジのところでピークを持ち、Hzが同じ所で符号を変える。電流はそこに集中している。こうして異方性が強い場合単純なリング状の双極子に近づく。
電流を積分し、外場の存在下での結果を加えあわせて(意味不明)計算した磁化をfig.1に示す。すべての磁場はJc0tで企画化されている。C0=0の結果はH=-0.01にピークを持っている。以前に説明した通り外場は磁化をゼロにする。なぜなら磁束線は直線になって(シータがゼロ)式1によればJcはゼロになるから。しかしC0=0の結果は不安定なもので繰り返し計算によって変化しやすく我々は頻繁に表れた値を図に示した。
Hzの対称性を考慮するとリング状の電流に関していくつかの洞察が得られる。Hzはmidplainで符号が変わるから、midplainでゼロでなければならない。C0=0で、角度依存性のみであるなら対称性によりmidplainで電流はゼロである。しかしMaxwell方程式によれば
(dBz/dr)-(dBr/dz)=0
(ここではHc1が小さいとしてBとHの違いは無視している)これはdBz/drとdBr/dzが同じぐらいの大きさであることを示す。それゆえ電流は二つの方向で(z方向r方向とも)同様のスケールで局在かしなければならない(すなわちディスクの厚さtで)。こうして二つのループが生じるが、それはmidplainのそれぞれの側に対称的に配置される(fig.2(c))。外から見ればこの分布は単純な一本のリングと似ている。
半径と厚さの比がもっと大きい場合には二つあるいはそれ以上のループを持った解も現れる(fig.2d)。確かにfig.3bに示すようにC0=0、C2=1の場合で比が10の場合は二つのループが生じている。この解は安定なものではないが、しかし一つと二つの場合を行ったり来たりしているようだ。これ以上の解析は行っていない。
実験と比較すればfig.1の結果は満足のいくものではない。磁化は大変小さい。外場ゼロで0.13しかない。Beanモデルなら5/3を与える。その理由は明らかに上記に示したように局在化した電流のリングから起因する電流の減少である。我々は半径依存性もやってみたが先に述べた通り比が大きな領域では収束が困難だったが、半径に対してsublinerな依存性を持つ(一般的に実験においては線形性が観測される)。ここでリングの内側で体積積分された?磁化は半径に依存しないことを注意しておく。
等方的成分のC0に有限のある値を与えた方が計算結果は観測結果にあてはまる。C0=0.5,C2=1の場合の計算結果をfig.1にあげる。磁場と電流の分布は(この図には書いていないが)磁化の計算結果を通常の等方的電流の場合の結果に近づける。再び磁化M(Ha)にピークが見られるが、今度は大きくて幅広く、外場に依存しない等方的電流からの寄与による部分の上に乗っていて、その大きさは0.5x5/3=0.8333でBeanモデルからくるM=JcR/3から期待されるものである(ここで0.5はC0=0.5から)。そのピークはわずかに中心からずれている。これは正と負の外部磁場に関する自己磁場のz成分の非対称性から期待される所だ。ピークの外部磁場非対称性は半径と膜厚の比が大きくなると減少する。これは未来の問題であろう。
物理的には以下のように解釈される。等方的な成分は半径方向の磁場をディスク全面にわたって生じさせる。実際に等方的成分はin-plainの寄与を安定化させ大きくする。fig.4にM(H)のピークの値(高磁場の磁化に乗った成分)をC0に対してプロットした。ピークの幅は高さに応じて大きくなっている。
実験により求めた臨界電流の角度依存性はin-plain近傍でcos2θよりも鋭いピークを示す。この鋭い角度依存性を検討してみるため一連の計算をより高次の項を用いて試みた。たとえばC2=1として他をゼロ、C4=1として他をゼロ、という具合である。その結果2次、4次、6次の場合で規格化された磁化は1.33,1.13,1.05と減少した。この減少はピークの高さの減少を示している。
要約すれば、この異方的電流密度を用いた計算は外部磁場ゼロ近傍でのピークを再現した。ピークは臨界電流が外場の絶対値に依存しないと考えられる場合にも存在した。このピークのメカニズムはディスク状のサンプルが大きな面内臨界電流値成分を持つことから生じている。ピークは臨界電流が異方的成分を持つ場合に大きくなりまた電流の角度依存性の幅に依存する。このピークによって結局はJc(a,b)(a,b)の大きさを決定できるかもしれない。これは結晶で直接的に測ることは難しい。また薄膜の低磁場での輸送電流測定の結果を説明してくれるかもしれないがこれも先の問題だ。
強調しなければならないことはこのメカニズムが他の物を排除するものではなく組合わさって起きてもよいということだ。確かにピークはサンプルがディスク状でなくても観測され、また自己磁場に面方向の成分がない場合にもピークはある。さらに今のところこのメカニズムを直接示す実験もない(それはディスクからロッド状のサンプルを切り出しての実験が必要だ)。他の効果に埋もれるかもしれないが、このメカニズムは起こりそうなものではある。(以下意味が不明)圧倒的にディスク状に成長する傾向、たぶんintrisic pinningによる大きな面内電流密度を示す証拠の増加