磁化緩和現象について

 今回の実験に使用する試料は、図〜のような幅w、厚さd、長さlの長いリボン状超伝導体である。このリボン面に垂直に磁場を印加した場合を考える。この場合、リボン状の超伝導体は、円盤状であると考えてもほぼ同じである。その円盤状超伝導体の面に垂直に磁場を印加した場合、今回使用する試料(YBCO)ならば、試料に侵入した磁束量子線は図〜のようにピン止めされる。そのとき、外部磁場を一定に保ったならば、ピン止め力は一定であるので磁束量子線はそのままピン止めされ、平衡状態に陥るはずである。しかし、実際には時間が経過するにつれて磁束量子線は、円盤の中心に移動し空間的に均一な状態に緩和する。この現象を磁化緩和現象という。

さらに、試料内で磁束量子線の数密度の勾配から生じる磁束量子線自身への力を考える。これはローレンツ力と類似した形をしている。

 F=(1/C)J*B

ここでJは空間的に平均した超伝導電流、Bは同じく空間的に平均した誘導電場である。このローレンツ力に対抗するピン止め力がなければ直ちに平衡状態の配置に磁束量子線は落ち着き超伝導電流ゼロになる。ピン止めがあれば、ピン止め力最大値とローレンツ力が等しくなる。