混合状態について

超伝導物質には2種類あり、第1種超伝導体と第2種超伝導体である。この2つの超伝導体の根本的な違いは、第1種の物質は中間状態を示すのに対して、第2種の物質は混合状態を示す。この混合状態は、第2種超伝導体が超伝導状態にあるときに外部から磁場を加えていくと、はじめの内はマイスナー効果により試料内部には磁場入り込めないが、外部磁場がある大きさの磁場Hc1に達すると磁場の侵入を許すようになる。そして、外部磁場の増加につれて、試料内部の磁束密度も徐々に増加し、ついには外部磁場Hc2に達すると常伝導状態での磁束密度の値と等しくなる。この外部磁場Hc1からHc2までの超伝導体内部の状態を混合状態と呼んでいる。

 

2種超伝導体に零磁場から磁場を加えていくとはじめの内は、マイスナー効果により完全反磁性を示す。ある大きさの磁場Hc1(下部臨界磁場)で磁束量子線の侵入を許し始める。

(この辺で図)

これは、超伝導体相と常伝導体相の境界で、負の境界エネルギーが生じ、その試料の自由エネルギーを最小する最大の境界面を取ろうとするためである。

(この辺で図)

また、この磁束量子線は、磁束量子の整数倍である。

(磁束量子の値)

 

しかし、超伝導層と常伝導層の境界面を最大の取るのならば、磁場Hc1で一気に超伝導から常伝導へ移るはずである。これを妨げているのが、磁束量子線のお互いの接近により斥力が生じるためである。

(この辺で図)

押された風船が内側の空気の圧力により外側に押し返すように、侵入した磁束量子線はお互いに反発することで磁束の侵入を妨げている。また、磁束量子線は、その相互作用のため無造作に配置されず規則正しい周期的な六角形の格子状に配置される。

(この辺で図)

このようにして磁束量子線は、雪崩のように侵入せずに徐々に試料を埋め尽くしていく。最後には、試料全体は超伝導状態から常伝導状態に移る。そのときの外部磁場の大きさをHc2(上部臨界磁場)とする。

 ここで、第2種超伝導体の磁気的性質を考えてみる。磁場Hc1より少ない外部磁場では、第2種超伝導体は、完全反磁性を示し−Ha(印加磁場Ha)に等しい磁化を示して第1種超伝導体のように振舞う(図〜)。印加磁場がHc1に到達すると、磁束量子線が試料内部に侵入する。侵入する磁束は、印加磁場と同じ向きであるので、試料中の磁束はもはや零ではなく、磁化の大きさは急激に減少する(図〜)Hc1~ Hc2間での外部磁場では、試料中の磁束量子線の数は、磁束量子線が互いに反発することに支配されている。外部磁場が増加するにつれて、磁束量子線が互いに接近するので、試料中の平均磁束密度は増加し、そして磁化はHaが増加するにつれなめらかに減少する。そして、Hc2以上では試料はμ0Haに等しい磁束密度と磁化零で常伝導状態になる。第2種超伝導体の成分が完全に均質であると、その磁化は可逆である。しかし、実際の試料(今回の実験で用いるYBCO)の磁気的性質は非可逆性を示す(~)。非可逆性は、混合状態にある超伝導体を通り抜ける磁束量子線が、材料にある欠陥(YBCOの単結晶では原因不明)にピン止めされて自由に動きまわる可能性を妨げていることで生じる。その結果、零から印加磁場を増加していくと、磁束量子線は試料の中に進むことを邪魔されるので、Hc1での磁束の急激な侵入はない。同様に、Hc2より大きな外部磁場を減少していくとヒステリシスがあり、磁束量子線の一部がピン止めされて、逃れることができず磁束が試料中に止まったままになるからである。