2017,12,13 更新
ひらめき☆ときめきサイエンス

実験と工作で体験するカオスと液晶の科学

↑昨年の活動の写真

実施日 平成29年12月10日(日曜日)

申し込み締切:平成29年12月1日(金)

2017/9/29時点での申込者数:5名,残り15名

実施責任者: 大分大学理工学部 共創理工学科 自然科学コース 長屋智之

協力者: 末谷大道,近藤隆司,岩下拓哉,小野澤晃,高橋徹


ニュースなどで,複雑で混沌とした状況を表す言葉として「カオス」が使われることがありますが,どの様な現象がカオスなのかが理解されていないと思います。この講座では,講義,工作,実験を通じてカオスの不思議な世界を体験してもらいます。
午前の講義ではカオスの基礎を説明します。また,本事業に関係した科学研究費の研究も紹介します。午後はカオスの運動をする二重振り子の製作にチャレンジします。振り子が止まらないようにする電子回路が必要なため電子工作(ハンダ付け作業)も行います。その後,カオスの信号を発生する電子回路の波形をオシロスコープで観測し,カオスの特徴を体感してもらいます。カオスになると土星の輪のような不思議な軌道がオシロスコープに映し出されます。最後に,液晶に電気を掛けたときに発生する電気対流を顕微鏡で観察し,電圧を増やしていくとカオス状態に移り変わる様子を見て頂きます。二重振り子,電子回路,液晶電気対流の3つの実験を通じてカオスとは何かを体験できます。  活動の終了後,希望者には実験装置の見学を実施します。

午前の講義:カオスの科学 講師:末谷大道

遠くの彼方にある星々の動きは将来に渡って正確に予言できるのに、我々にとってより身近な天候についての予測には自ずと限界があります。 これは「カオス」と呼ばれる物理法則そのものに内在する性質と大きく関わっていて、自然の中に様々な形で潜んでいます。 講義では、物理・化学・生物系で現れる代表的なカオス現象を紹介すると共に、周期倍分岐や「フラクタル」と呼ばれる自己相似構造など、カオスの背後にある普遍的性質について解説します。

 


   

午後の実験1:カオス二重振り子の作成 講師:長屋智之

カオス二重振り子は,カオス振動が観測できるように作られた振動子です。面白い運動をするので,インテリアにも使われています。本活動では,皆さんにカオス二重振り子を作作り,持ち帰って頂きます。作成する二重振り子の振動の様子をビデオで示します。空気抵抗や振り子を指示する場所での摩擦によって次第に振動は減衰するため,トランジスタスイッチという電気的な仕掛けで振動が止まらないようにしています。トランジスタスイッチが動作するとき,発光ダイオードが赤く光るようにしています。市販のカオス振り子のインテリアでは,この電子部品は見えないようにしています。本活動では,振動を継続するために振り子を励起するトランジスタスイッチ回路も作って頂きます。カオス振り子が動く様子を動画で見て下さい。

 



   
倍周期発振 4倍周期発振

午後の実験2:カオス信号の観測 講師:長屋智之

チュア回路という電子回路で発生するカオス現象をオシロスコープで観測します。電気信号はスピーカーでも聴けるようにしています。その為,発振が起こると,ピーという音が鳴ります。回路の一つの抵抗の値を徐々に変えていくと,ピーという音は徐々に高くなり,カオス発振状態ではザザザーというノイズの様な音が聞こえてきます。皆さんに,波形と音の観測実験を行って頂きます。チュア回路の波形と音を動画で見て下さい。

 





単純発振

単純発振

倍周期発振

倍周期発振

4倍周期発振

4倍周期発振

カオス発振

カオス発振

周期的発振

周期的発振

周期的発振

周期的期発振

カオス発振

カオス発振

ダブルスクロールカオス発振

ダブルスクロールカオス発振

ダブルスクロールカオス発振

ダブルスクロールカオス発振

ダブルスクロール発振

ダブルスクロール発振

ダブルスクロールカオス発振

ダブルスクロールカオス発振

ダブルスクロール発振

ダブルスクロール発振


午後の実験3:液晶電気対流 講師:長屋智之

ある種のネマチック液晶に電圧をかけると,対流が発生します。これは,冬の寒い日の味噌汁に現れる,”レイリーベナー ル対流”とよく似た現象です。棒状の液晶分子の方向を揃えると,綺麗な縞状パターンが観測できます。この液晶電気対流は電圧が高くなるにつれて次第に 揺らぎを伴う対流に変化し,最後には乱流状態に至ります。歴史上初めて実用化された液晶ディスプレイは,この乱流状態が光を激しく散乱することを応用 しました。
この活動では,液晶電気対流の様子を顕微鏡で皆さんに見て頂きます。

注意:ブラウザーの設定によっては動画が見えないことがあります。Macは mp4動画、Windowsはwmv動画をクリックしてください。


10.4V 静的な縞模様(動画は10.9V)

Williams Domain


液晶対流の模式図



13.8V 縞模様のゆらぎ

Fluctuating Williams Domain


(b)の状態で暫くすると波模様になる

Wavy Pattern


23V グリッドパターン

Grid Pattern


31V 動的散乱モード(乱流状態)

Dynamic Scattering Mode